減塩は血圧以外のリスク予防になる!?

減塩と言えば、「血圧が気になる人が気をつけるもの」というイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが、減塩は血圧を下げる以外にもさまざまリスク予防に効果が期待できることをご存じでしょうか?

今回は、血圧が気になる方以外にはもちろん、「自分にはまだ関係ない!」と思っている方にこそ知ってほしい情報をあすけん栄養士が解説します。

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食塩の摂り過ぎは●●のリスクにも影響

肥満のリスクが上昇

食塩摂取量が増えると肥満のリスクを上昇させるという研究報告(※1)があります。研究では、食塩摂取量が増加するにつれて、BMI(体格指数)があきらかに上昇することがわかりました。1日の食塩摂取量が1g増えると、肥満になるリスクが21%上昇したことも明らかになっています。

味が濃い食事は食欲を増進させてしまう恐れがあるので、ダイエット中の方はうす味を心掛けると食欲をセーブしやすいでしょう。

糖尿病の発症リスクは約1.7倍

食塩は血糖値に直接影響はしませんが、食塩の摂りすぎが高血圧や肥満の原因となり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを弱めてしまうことで、2型糖尿病のリスクを上昇させると考えられています。

食塩の摂取量が少ない人(1日5.8g未満)と比べて多い人(1日7.3g以上)では、2型糖尿病の発症リスクが約1.7倍上昇するという研究報告(※1)もあります。

血糖値が気になる方で、濃い味付けが好きな方は要注意です。

脳卒中や心疾患のリスクが上昇

日本人の高血圧の方の特徴は「食塩摂取量が多いこと」とされており、高血圧により脳卒中や心疾患のリスクが高まることが知られています。
食塩摂取量を減らしていくともに、健康診断などで定期的な血圧のチェックも大切です。

減塩に関するウソ・ホント!?

蒸し暑い日に汗をかいたら食事にもっと塩分が必要?

熱中症対策として、暑い時期に味の濃いものを意識して食べている、という方は注意が必要です。
汗をよくかく季節は、こまめな水分補給が必要ではありますが、もともと日本人は食塩摂取量が多いため、暑いからと言って食事から食塩をたくさん摂る必要性は低いと言えます。

ただし、大量に汗をかく状況では、体内の水分と食塩のバランスが崩れると、熱中症の一因になってしまうため、水分と一緒に食塩を補給することが大切です。その際は経口補水液や、塩タブレットなどを利用すると良いでしょう。

“天然塩”は普通の塩より大丈夫?

天然塩はカラダに良いイメージを持つ方もいるかと思いますが、「減塩が気になるので、天然塩を選んでいる」という方は注意が必要です。注意すべきは製造法ではなく、食塩の摂取量です。天然塩だからと言ってたくさん摂ると、やはり食塩の過剰摂取になってしまいます

ですが、まろやかな味わいなどの特徴を生かして、普段より食塩の量を減らすことができるのであれば、利用してみても良いでしょう。

食塩の摂りすぎになりやすい料理・食品

かまぼこやウインナーなどの加工食品

かまぼこ・ちくわ・カニカマなどの練り製品や、ウインナー・ハム・ベーコンなどの加工食品は、加工の際に食塩が添加されるため、他の食品に比べると食塩量が多くなっています。

例えば、かまぼこ(1切20g)には0.51g、ウインナー (1本20g)には0.38gもの食塩が含まれます。また、これらを食べるときにしょうゆなどをつけて食べる方は、食塩のさらなる摂りすぎになってしまうため注意しましょう。

梅干しなどの漬物

漬物は長く保存するために食塩が多く使われており、少量でも食塩の摂りすぎにつながりやすい食べ物です。

日本人が目標とする食塩の量は、男性7.5g未満・女性6.5g未満ですが、例えば梅干し1個(15g)には、3.31gもの食塩が含まれており、これだけで1日の目標量の半分も摂ってしまうこととなります。

また、定食屋などでテーブルの上に漬物の容器が置いてあり、食べ放題になっているものがありますが、食べ過ぎてしまいやすいため気を付けましょう。

ラーメンやうどんなどの麺類

ラーメンやうどん、そばなどの汁のある麺類は、汁まで全部飲み干すと、1日分の食塩目標量をオーバーしてしまうメニューもあります。プラスしてチャーハンやぎょうざ、いなり寿司などを食べると、さらに食塩を摂ってしまうこととなります。

麺の汁は1~2口楽しんで、あとは残すようにするだけで半分は食塩をカットすることができますよ。プラスのメニューも、ダイエットのためにも控えるほうが良さそうですね。

ちょっとした工夫でできる減塩方法3つ

1.食塩が多いものの回数を減らす

ハムやかまぼこ、漬物、ラーメンなどの麺類などをよく食べる方は、まずはその回数を減らしてみましょう

よく食べるものは、「○○は週1回まで」などのマイルールを決めても良いですよ。外食や弁当に漬物が入っていた場合、思い切って残すのもひとつの方法です。

「薄味にする」よりはハードルが低いため、まずはこれから取り組むと良いでしょう。

2.しょうゆやソースはかけずにつける

しょうゆやソースを料理にかけて食べると、ついかけ過ぎてしまうことがありますよね。

また、小袋に入ったしょうゆやソースを全部かけてしまう方もいるかと思います。直接かけるのではなく、小皿などに出してつけて食べるようにすると、かけ過ぎを防いだり、使う量を減らしたりすることができますよ。

3.物足りないときは一味唐辛子やこしょうをかけてみる

物足りないときにしょうゆやソースをプラスしてかけてしまう方は、一味唐辛子やこしょうに変えてみましょう。

味にアクセントが出るため、薄味のものでもおいしく食べることができますよ。味を見る前にかけてしまう方は、まずはそのまま食べてみて、本当に必要かどうか考えてみるクセをつけましょう。

減塩はちょっとした積み重ねを続けて、少しずつ食塩摂取量を減らしていくことが大切です。うす味のものを食べ続けると、味覚も慣れていくと言われています。

最近では、インスタントラーメンなどでも減塩タイプのものを見かける機会が増え、世間でも減塩に対する関心が高まってきています。この機会に減塩について考えてみませんか?

※このコラムでは、表記を「食塩」に統一しています。

 

【参考・参照】
(※1)Long Zhou et al. “Salt intake and prevalence of overweight/obesity in Japan, China, the United Kingdom, and the United States: the INTERMAP Study.” The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 110, Issue 1, July 2019, Pages 34–40
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 <https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586565.pdf>(最終閲覧日:2020/01/21)
厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査 <https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf>(最終閲覧日:2021/01/07)

執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

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