「よく噛むこと」はメリットがいっぱい!手軽に実践できる5つのコツ

忙しいからとつい早食いになったり、急いで食べられるメニューを選んでしまったりと、よく噛まないで食事をとることが習慣になってしまっている方も少なくないのではないでしょうか。

「よく噛む」ことは、ダイエットだけでなく、血糖値が気になる方にも良いと言われています。今回は「よく噛む」ことのメリットと実践のコツについて、あすけん栄養士が解説します。
Healthy white teeth and removing yellow tooth with caries agains

よく噛むことのメリット

カロリー消費量の増加

急いで食べるよりも、よく噛んでゆっくり食べた方が食後のエネルギー消費量が大幅に増えたという研究報告があります。(※1)

これは、よく噛んでゆっくり食べた方が、食後のエネルギー消費量(食事誘発性体熱産生=DIT)が高くなったことと、消化管の血流が高くなったことで消化・吸収活動が増加したことが要因と考えられています。

同研究チームが仮定した計算では、体重60㎏の人が、1日3回よく噛んで食べたとすると、1年間のエネルギー消費量は早食いの人より1万1000kcal増やせることとなり、これは体脂肪に換算すると1.5㎏に相当します。

「ゆっくりよく噛んで食べると太りにくい」ということが言える結果でしょう。

早食いは肥満リスクが上昇

早食いの者は早食いではない者よりも4.4倍肥満になりやすく、男性は女性よりも2.8倍肥満になりやすい、ということが岡山大学の研究でわかりました。

早食いと肥満の関係は、「油っこいものを好んで食べること」や「満腹まで食べること」などよりも強い関係性があることもわかっています。(※2)

早食い習慣を改善することは、将来の肥満や生活習慣病予防に役立つと考えられており、早食いを防ぐために「よく噛む」習慣作りが大切です。

食べ過ぎ防止に役立つ

「よく噛む」ことで、食欲を抑制する「GLP-1」などの消化管ホルモンの分泌も促されると言われています。また、脳の働きも活発になり、満腹中枢や交感神経が刺激され、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌も刺激されると考えられています。

よく噛んで食べることで、満腹感を得られやすくなり食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。

糖尿病リスクの低下

噛む力が強い男性は、糖尿病リスクが半分ほどに低下したという研究報告があります。(※3)

京都大学の研究チームが約6800人分のデータを解析したところ、噛む能力が最も高いグループでは、最も低いグループに比べて2型糖尿病リスクがほぼ半減することがわかりました。

また、糖尿病の予防には、食後の急激な血糖値の上昇を抑え、インスリンの分泌を節約することが大切です。早食いにより食後の血糖値が上がりやすいとされているため、よく噛んでゆっくりと食べることが糖尿病予防に大切と言えます。

むし歯・歯周病を予防する

よく噛むことによって、だ液の分泌量が増えます。だ液は、口の中の汚れを洗い流して歯の表面をきれいにし、口の中を常に中性に保とうとする作用があるので、むし歯・歯周病の予防になると言われています。

また、歯周病は三大合併症といわれる腎症・網膜症・神経症に次いで第6番目の糖尿病合併症と言われています。歯周病の治療により血糖コントロールが改善するという研究結果が日本での研究も含めて多く報告されています。

ただ、全ての症例で血糖コントロールが改善しないことも明らかになっているので、今後の研究に期待したいですね。

手軽に「噛む回数」を増やすコツ5個

厚生労働省の検討会では、一口30回噛む習慣を奨めています。まずは、今の自分の噛む回数を知り、今よりも多く噛むことを意識することから始めましょう。

1.歯ごたえのある食材を取り入れる

自然と噛む回数を増やしてくれますので、食事の際に意識して取り入れましょう。外食やコンビニなどでも、これらが入ったメニューや、1品付け加えるのも良いですね。
ごぼうれんこんたけのこなど
・硬めに茹でた野菜
・生野菜
ひじき切り干し大根などの乾物類

2.食材は大きめにカットする

大きくカットすることで、飲み込めるようになるまでしっかりと噛むことが期待できます。外食やコンビニでも、ゴロゴロと野菜の入ったメニューを選ぶのも良いでしょう。

3.スマホやテレビを見ながらの「ながら食べ」はしない

ついしてしまいがちな「ながら食べ」ですが、食事に集中できずによく噛めないことが考えられます。忙しい中でも、食事中はスマホやテレビはお休みしましょう。

4.やわらかい食べ物は避ける

「ふんわり」や「とろける」など、やわらかい食べ物は魅力的ではありますが、よく噛まずに食べられてしまうため注意が必要です。やわらかい菓子パンや、よく噛まずに食べられるやわらかい肉類、ふんわりとした洋菓子などは要注意です。

主食は玄米雑穀米を取り入れたり、肉類は噛み応えのある脂肪の少ない肉類にしたり、間食はナッツや果物などにしたりと、よく噛める食べ物を選ぶよう心がけましょう。

5.一口の量を少なくする

早食いの方は、一口当たりの量が多く、噛む回数が少ない傾向があるようです。一口の量が多くないか確認してみましょう。また、スプーンを使って食べることが多いという方は、一口量が多くなりやすいため箸で食べるようにしましょう。

「よく噛む」ことは誰にでもすぐに取り組める方法です。しかし、早食いが習慣化してしまっていると、なかなか修正は難しいもの。まずは今の自分の噛む回数を数えたり、食事の時間を測ってみたりなどと、取り組みやすい方法からでOKです。次の食事から早速意識してみてくださいね。

 

【参考・参照】
(※1)Hamada Y, Kashima H, and Hayashi N.,“The number of chews and meal duration affect diet-induced thermogenesis and splanchnic circulation”,Obesity, Volume 22, Issue 5, May 2014,pages E62–E69
(※2)Manabu Morita el al. , ” Relationships Between Eating Quickly and Weight Gain
in Japanese University Students: A Longitudinal Study “, Obesity, Volume 22 number 10, 2014,p.2262-2266
(※3) Toru Yamazaki,Masashi Yamori ,Keita Asai,Ikuko Nakano-Araki,Akihiko Yamaguchi,Katsu Takahashi,Akihiro Sekine,Fumihiko Matsuda,Shinji Kosugi,Takeo Nakayama,Nobuya Inagaki,Kazuhisa Bessho,for the Nagahama Study Collaboration Group,“Mastication and Risk for Diabetes in a Japanese Population: A Cross-Sectional Study”,Published,8(6),2013,e64113

【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

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