しっかり知ろう!食物アレルギーのメカニズム
食後、皮膚が赤くなったり、湿疹が出たなど「もしかして、食物アレルギー?」と思ったことはありませんか?実は現在、乳児から成人まで3人に1人が何かしらのアレルギーを持っていると言われています。そこで、そもそもアレルギーとは何なのか、アレルギーのメカニズムや症状などをご紹介します。
食物アレルギーとは
通常、食べ物は栄養素としてカラダに吸収されますが、カラダが食べ物を異物と捉えて、じん麻疹や咳などの症状が起こることをアレルギー反応と言います。食物アレルギーは、異物、つまりアレルゲンが原因で起こる免疫反応による過敏症で、アレルゲンの多くは、動植物由来のタンパク質がほとんどです。
食物アレルギーのメカニズム
食物アレルギーは大きく分けて、即時型アレルギー反応と非即時型アレルギー反応の2つのタイプがあります。
即時型アレルギー反応
食物アレルギーのほとんどが即時型アレルギー反応タイプで、IgE抗体という私たちのカラダの中にあるタンパク質が介在して起こります。このIgE抗体が、食べ物で摂取したアレルゲンと出会うことでアレルギー反応が現れます。
つまり、摂取した食べ物は、アレルゲンを残したまま腸から吸収された後、血液にのって全身に運ばれIgE抗体と出会うことで、皮膚・鼻・喉・目・腸などでさまざまな症状を起こすのです。即時型の場合、食べ物を摂取してから約2時間以内にアレルギー反応を起こすことがほとんどです。
また、一人ひとり免疫反応に違いがあるため、卵に対するIgE抗体を作る人、牛乳に対するIgE抗体を作る人などがいます。このことが、卵アレルギーを持つ人、牛乳アレルギーを持つ人を決める要因の一つとなります。
非即時型アレルギー反応
即時型に対して、IgE抗体を持たないものを非即時型アレルギー反応と言います。その原因は、まだ研究段階ですがT細胞というリンパ球が原因ではないかと考えられています。食べ物を摂取してから数時間後に湿疹やかゆみなどの皮膚症状が現れるのが特徴です。
食物アレルギーの症状
摂取するアレルゲンの量や年齢によって異なりますが、皮膚粘膜症状・消化器症状・呼吸器症状の順に現れやすいとされており、最も重い症状として生命にかかわるアナフィラキシーショックを起こすこともあります。主なアレルギー症状は次の通りです。
◆皮膚症状 ・・・ じん麻疹・湿疹・かゆみ・赤み
◆粘膜症状 ・・・ 充血・涙目・喉のかゆみ・口内や目が赤く腫れる
◆消化器症状 ・・・ 腹痛・嘔吐・下痢
◆呼吸器症状 ・・・ くしゃみ・鼻づまり・鼻水・咳・呼吸困難
◆全身症状 ・・・ アナフィラキシーショック(頻脈・血圧低下・活動性低下・意識障害)
アレルギー物質を含む食品表示に関して
アレルギー症状が起こることを防ぐため、アレルゲンを含む加工食品や添加物については、消費者庁により容器包装への表示が規定されています。2023年3月現在の対象品目は28品目です。その中でも特に症状が重く、症例数が多い8品目については、食品表示の義務があります。症例数が比較的少ないか、重篤な例が少ない20品目については、食品表示が推奨されています。
【表示義務のあるもの8品目】
エビ・カニ・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)
【表示推奨されているもの20品目】
アーモンド・あわび・イカ・イクラ・オレンジ・カシューナッツ・キウイ・牛肉・ごま・鮭・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・山芋・りんご・ゼラチン
外食や、お惣菜などの中食は表示規定の対象外のため、利用する際には注意が必要です。
乳児期に発症した食物アレルギーは、自然に症状が落ち着いていく例が多く、幼児から成人で発症したものは治りにくいと言われています。食事が原因と思われるアレルギー症状が出たら、食べた物を思い出し書き留めたり、食品表示を確認したりして、心配な場合は、専門医に相談しましょう。
【参考・参照】
消費者庁「食物アレルギーに関する情報」
〈https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/〉(最終閲覧日:2023/9/26)
東京都保健医療局「東京都アレルギー情報navi.」
〈https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/allergy//index.html〉(最終閲覧日:2023/9/26)
※令和元年に食品表示基準が改訂されアレルギー特定原材料にアーモンドが追加、令和5年3月に表示義務に「くるみ」が追加されたことを受け、一部追記・編集いたしました。
仕事に没頭しすぎたことで体調を崩したことをきっかけに、健康的なカラダが仕事の質を良くするという思いを胸に約6年勤めた会社を退社し、栄養士の資格を取得。
その後、JICA青年海外協力隊として2年間、中米グアテマラで現地の栄養教育を経験。
現在は、病院で食事・栄養管理に関わる仕事と子育てをしながら、あすけん栄養士としてコラムの執筆やオンライン栄養カウンセリングを担当。
栄養士
保延 弘美