アスリート向けの食事法!カーボローディングって知ってる?

「カーボローディング」って聞いたことありますか?

「グリコーゲンローディング」ともいわれ、アスリートやスポーツ選手が競技前に行う食事法のひとつです。カーボローディングを行うことにより、持久力アップが期待されています。

スポーツ選手でなくても、マラソン大会や登山、スポーツの試合の前など、持久力を必要とする場面に活用することもできるので、一般の方も知っておいて損はない食事法ですよ。

今回はカーボローディングの効果や方法について解説していきます。

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カーボローディングとは?

持久力を維持するための食事法

カーボローディングは競技の3日前から高糖質食を摂取して糖質を貯蔵し、競技中にエネルギー不足にならないようにするための食事法です。

1時間以上の競技や、20km以上の走行がある競技など、持久力を必要とする競技の前に行うと有効とされています。(※1)

歩行程度の軽い運動では体脂肪が主なエネルギー源として使われますが、持久力を必要とする運動では筋肉と肝臓に貯蔵された糖質=「グリコーゲン」が使われます。

ですが貯蔵できる量は限られており、運動をすると1時間ほどで3分の1以下まで減少してしまうといわれています。グリコーゲンが不足すると、筋肉では筋疲労が生じ、脳もエネルギー不足となり中枢性疲労の原因となります。

カーボローディングにより筋肉のグリコーゲン貯蔵量を2倍ほど蓄えることができると考えられており(※2)、筋疲労や中枢性疲労を予防し、競技中の持久力やパフォーマンスの維持に役立つとされています。

カーボローディングのデメリット

糖質には水分を保持する働きがあり、グリコーゲン1gあたり3~5gの水分が増加します。(※2)筋肉のグリコーゲン貯蔵量は約400gほどですが、カーボローディングにより800gまで増やすことで、400g×3~5g=1200~2000gの水分が増えることとなります。

体重が1.2~2㎏ほど増えることになるため、競技によってはカラダが重たくなることのデメリットを考える必要もあります。

さらにカーボローディング中は、糖質の代謝に必要なビタミンB1の必要量が高まります。ビタミンB1が不足することで酸素を取り込む力が低下することもわかっているため(※1)、ビタミンB1を含む豚肉大豆製品、緑黄色野菜などを意識して摂取するなどの対策が必要です。

カーボローディングの実践法

競技までのスケジュール

カーボローディングは、主に競技の3日前から行われます。以前は1週間前から行う古典法という方法が使われていましたが、心身の負担が大きいとされ、現在は改良法が主流となっています。

<カーボローディングの競技までのスケジュール>

3日前まで 3日前~前日 当日 ※競技中
通常のバランスの良い食事

 

高糖質食
(1日の糖質量=体重×8~12g程度)
朝食の糖質量
=体重×1.5~2g
1時間に30~60gの糖質を補給

 

競技の3日前~前日

競技の3日前までは通常通りのバランスの良い食事をとり、3日前からカーボローディングに取り組みます。競技までの3日間は「高糖質食」を摂取します。

1日の糖質量は体重×8~12g程度、または糖質のエネルギー比率が70~80%になるように摂取する方法が勧められています。

例えば55㎏の女性の場合、440~660gの糖質量になる計算です。ご飯1杯150gの糖質量は53.4gなので、ご飯量だけで換算すると8~12杯分となり、かなりの量の糖質が必要です。

実際はご飯だけでなく、野菜や乳製品、果物からも糖質をとるためご飯量の換算は目安となります。パンや餅、芋などの糖質を含む食べ物を組み合わせて、工夫して糖質を摂る必要があるでしょう。

競技の当日

当日の朝食は、競技の負担にならないように3~4時間前までに済ませます。ここでは体重当たり

1.5~2.0g程度の糖質の量で良いとされ、一般的な朝定食にデザートを加える程度が目安となります。

ここで注意したいのが、競技当日にも高糖質食を摂ってしまうことです。インスリンという血糖値を下げるホルモン分泌が強く促進され、糖質を多く消費してしまう可能性があるとされています。(※2)競技の当日は糖質の摂り過ぎに注意しましょう。

また競技中も血糖が消費されるため、1時間に30~60gの糖質補給も有効とされています。(※2)糖質を含む飲み物で水分補給するなどで糖質を補給し、グリコーゲンが枯渇しないよう対策しましょう。

カーボローディングは個人の体格や競技、練習量を考慮した必要エネルギー量の決定、食事中の糖質量の計算など、専門的な知識が必要とされる場合が多く、スポーツ栄養士に相談することも勧められています。また体重増加による不調など個人差もあるため、いきなり行うのではなく、競技を想定して試してから行うようにしましょう。

 

【参考・参照】
(※1)公益財団法人 日本スポーツ協会 アスリートの栄養・食事<https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-34.pdf>(最終閲覧日:2020/06/29)
(※2)川中健太郎 スポーツ選手のための糖質摂取の考え方 臨床栄養 Vol.134 No.2 2019.2 P166-173(最終閲覧日:2020/06/29)

【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

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