血糖コントロールが改善する?!知っておきたい歯周病と糖尿病の関係

「糖尿病があると歯周病になりやすくなる」または「歯周病を治療すると、血糖コントロールが改善する」…などと聞いたことはありますか?実は口の中の状態と糖尿病には、深い関係があることが知られているんです。今回は知っておきたい歯周病と糖尿病の関係や、気をつけたいポイントについて解説します。

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歯周病とは ~歯周病は糖尿病の「第6の合併症」~

歯周病は糖尿病との関連が深く、糖尿病の「第6の合併症」ともいわれています。

歯周病は歯の表面につくプラーク(歯垢)によって起こる炎症性の病気で、歯を失う原因の第一位です。気づかないうちに進行し、歯がグラグラするまで放置してしまう場合が少なくないといわれています。

歯周病は歯の健康を損なうだけでなく、糖尿病、さらには心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、がん、早産・低体重児出産などとも関連があると報告されています。口や歯の健康を保つことは、全身の健康状態を保つためにも大切だといえるでしょう。

糖尿病の方は歯周病発症リスクが2.6倍

2型糖尿病の方の歯周病発症率は、糖尿病でない人に比べて2.6倍高いことがアメリカの大規模な疫学研究の結果でわかっています。(※1)

糖尿病の方における歯周病が悪化するメカニズムとして、高血糖により脱水傾向となり、口腔内が乾燥することで唾液の自浄作用が低下して歯肉に炎症が起こりやすくなることや、免疫機能の低下から歯周病の原因となる細菌に感染しやすい状態になることが知られています。(※2)

糖尿病と歯周病に関連があることは、あまり知られていないといわれています。後ほど口と歯の状態のセルフチェックをお伝えするので、当てはまっていないか確認してみてくださいね。

歯周治療でHbA1cの改善がみられる

Healthy white teeth and removing yellow tooth with caries agains

歯周治療を行い歯肉の炎症をコントロールすることで、インスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善すると考えられています。

歯周病と2型糖尿病の関連はさまざまな研究が行われており、歯周治療により血糖コントロールの指標であるHbA1cの改善がみられることが、多くの研究によって知られています。

一般社団法人日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドライン2019には、多くの研究に共通する結果として、歯周治療後にHbA1cが0.29~0.66%低下することが示されている、とも記載されています。

まだ研究が進められている段階ではありますが、日本糖尿病学会や日本歯周病学会では歯周治療が推奨されており、定期的な歯科健診を受けることについても呼びかけられています。

口と歯の状態をセルフチェックしてみよう!

下記の症状に当てはまる方は、口や歯の状態が悪くなっている可能性が考えられます。(※3)当てはまっていないか、チェックしてみましょう。

・歯ブラシのときに出血する
・起床後に歯茎に違和感がある
・体調が悪いときなど、歯肉が腫れることがある
・歯肉が下がって、歯が長く見えるようになった
・歯肉が黒ずんでいる
・口臭を感じる、または指摘された

これらに1つでも当てはまった方は、早めに歯科医院を受診しましょう。もしこれらに当てはまらなくても、糖尿病治療中の方は定期的な歯科健診を受け、早期発見できる環境を作っておくことも大切です。かかりつけの歯科医院を作り、年に1~2回のチェックやクリーニングを行いましょう。

口や歯の状態が良くないと、食べ物をうまく噛めないために硬い野菜を避けてしまい、血糖コントロールに大切な食物繊維の摂取量が減ってしまうことも考えられます。糖尿病と歯周病が悪循環になってしまわないためにも、定期的な口の健康状態のチェックを欠かさないようにしましょう。

 

【参考・参照】
(※1)Robert G Nelson, MD, MPH, Marc Shlossman, DDS, MS, Lynn M Budding, DDS, MS, David J Pettitt, MD, Mohammed F Saad, MD, MRCP, Robert J Genco, DDS, PhD and William C Knowler, MD, DrPH,“Periodontal Disease and NIDDM in Pima Indians”,Diabetes Care 1990 Aug; 13(8): 836-840.
(※2)一般社団法人 日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2019
(※3)特定非営利活動法人 日本歯周病学会 歯周病Q&A<http://www.perio.jp/qa/symptom/>(最終閲覧日:2021/02/12)
特定非営利活動法人 日本歯周病学会 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン改訂第2版 2014

【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

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