高齢者だけじゃない!若い人にも起こりうる「サルコペニア」とは?

筋肉量が減少するという意味の「サルコペニア」。加齢が原因と思われがちですが、実は、年齢に関係なく起こる可能性があるとされています。今回は、サルコペニアの原因と、予防のために気をつけたい食生活についてご紹介します。

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サルコペニアを知ろう

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、高齢期における筋肉量の減少筋力や歩行速度が低下していく症候群のことを言います。
一方で、18~20歳の男女1,264人を対象とした京滋大学の調査によると、筋肉量は、男性は身体活動量、女性はエネルギー摂取量が多い人ほど多いという研究報告があります(※1)。つまり、運動量やエネルギー摂取量が不足していると、年齢に関係なく筋肉量が減ってしまうと考えられます。

サルコペニアになるとどうなる?

筋肉量が減ることで、カラダのバランスを保つことが難しくなることから、次のことが起こるとされています。

・ 歩くスピードが遅くなる
・ 転倒や骨折がしやすくなる
・ 階段の上り下りがつらくなる
・ 外出がつらくなる
・ 飲み込む力が弱くなる
フレイル(※)のリスクが高くなる

(※)フレイルとは、年齢を重ねることでココロとカラダの機能が低下した状態のことを言います。

サルコペニアの原因は?

主に活動量の低下、栄養の摂取不足が原因と考えられ、一次性と二次性に分類されます。

・一次性サルコペニア
65歳以上を対象に、加齢以外に明らかな原因がないものを言います。

・二次性サルコペニア
加齢に関係なく、様々なカラダの状態が原因と考えられます。例えば、寝たきりや極度の運動不足、病気の影響によるもの、栄養不足などです。

サルコペニアの診断とセルフチェック

サルコペニアの診断は、筋肉量が減っているかどうかがポイントになります。ふくらはぎの太さ、握力、椅子の立ち上がりテストなど身体機能で総合的に判断されます。

セルフチェックに「指輪っかテスト」

簡単にセルフチェックをする方法として「指輪っかテスト(※2)」があります。

まずは、座った状態で行います。

① 両手の親指と人差し指で、ひとつの大きな輪を作ります
② 利き足でないふくらはぎの一番太い部分を囲います
③ すき間ができるか、できないかをチェックします

この時、指輪っかを作った指同士がくっつかず、ふくらはぎを囲めない場合は、サルコペニアの可能性は低いとされます。逆に、もし、指輪っかよりもふくらはぎが細い場合は可能性が高いとされます。

サルコペニア予防にできること

タンパク質を1.0g/kg/日以上摂る

サルコペニア診療ガイドラインでは、「1日に(適正体重)1kgあたり1.0g以上のタンパク質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があり,推奨する。(※3)」としています。

例えば、60代女性で体重54kgの場合、1日のタンパク質量は54g以上となります。
タンパク質は、肉・魚以外にも大豆製品や、ご飯や野菜にも含まれます。様々な食材を組み合わせてバランスよく摂るようにしましょう。
タンパク質の上手なとり入れ方

カラダを動かす習慣を

スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操といった筋肉に抵抗をかける運動が勧められています(※4)。その他にも、ラジオ体操をする、少し早く歩いてみる、階段を使うなど、日常生活にとり入れやすいことを試してみましょう。

日頃から適切な栄養を摂ること、適度な運動をすることは筋肉量の維持につながるとされるため大切です。高齢期の方が、低栄養の改善や運動をする場合は、医師や看護師、管理栄養士の指導のもと行うようにしましょう。

 

高齢者だけが対象と思われがちなサルコペニアですが、年齢に関係なく起こる可能性があります。食事の栄養バランスを整えたり、適度な運動を行うようにして、予防したいですね。

 

【参考・参照】
(※1) Toru Kusakabe et al, “Cross-sectional association of skeletal muscle mass and strength with dietary habits and physical activity among first-year university students in Japan”〈https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.04.28.22274428v1〉(最終閲覧日:2022/9/27)
(※2) 東京大学高齢社会総合研究機構 「フレイルを予防して健康寿命をのばしましょう」〈https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/medical_welfare/application/pdf/acd1d84742f2e1487b8218b5c06b78e6.pdf〉(最終閲覧日:2022/9/27)
(※3) 日本サルコペニア・フレイル学会 「サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂」p.8「表2 サルコペニアの診断におけるカットオフ値の比較」より〈https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001021/4/sarcopenia2017_revised.pdf〉(最終閲覧日:2022/9/27)
(※4) eヘルスネット サルコペニア〈https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-087.html〉(最終閲覧日:2022/9/27)

【執筆者】
仕事に没頭しすぎたことで体調を崩したことをきっかけに、健康的なカラダが仕事の質を良くするという思いを胸に約6年勤めた会社を退社し、栄養士の資格を取得。その後、JICA青年海外協力隊として2年間、中米グアテマラで現地の栄養教育を経験。現在は、病院で食事・栄養管理に関わる仕事と子育てをしながら、あすけん栄養士としてコラムの執筆やオンライン栄養カウンセリングを担当。

保延 弘美

栄養士
保延 弘美

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