「フレイル」って聞いたことありますか?

「フレイル」という言葉を知っていますか?元気なうちはメタボ対策が大切ですが、年齢を重ねてくると、介護予防のための対策が必要となってきます。高齢になっても自分らしい暮らしを続けていくためには、日々のちょっとした心がけが大切です。
フレイルは、介護予防や健康問題の対策として最近できた言葉です。自分にはまだ関係ないと感じている方も、ご家族や身近な人のために知っておくと役に立ちますよ。
今回はフレイルについて解説していきます。

フレイルを知ろう

フレイルとは?

フレイルとは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を指します。わかりやすく言うと、「年齢を重ねることでココロやカラダの機能が低下した状態」です。
誰でも加齢による影響は避けられませんが、フレイルは加齢の影響が進行し、介護が必要になる一歩手前の状態を指します。

フレイルになるとどうなる?

フレイルは要介護になる手前の状態なので、健康状態や日常生活にも影響が出やすい状態です。病気にかかりやすかったり、転んでけがをして入院したりするなどの健康問題や、自立した生活を送れなくなり施設入所が必要になるなどの問題が起きやすくなります。
そのような問題が起きてしまうと回復にも時間がかかり、元の状態に戻れなくなることも考えられます。
フレイルは早い段階で対策を行うことで、健常な状態に戻ることができるとされているため、このような問題が起きる前の対策が大切です。

フレイルの原因は?

加齢による衰えは生理的なものではありますが、以下のものがフレイルを進めてしまうリスクとなります。
・加齢にともなう活動量の低下と、社会交流機会の減少
・偏った食事内容や運動不足などの生活習慣
・慢性的に管理が必要な病気(生活習慣病や心血管疾患など)
・意欲低下や抑うつ傾向など

簡単にできるフレイルのチェック

フレイルの基準

1.体重減少
2.疲労感
3.活動度の減少
4.身体機能の減弱(歩行速度の低下)
5.筋力の低下(握力の低下)

Friedらの基準(※1)によると、上記項目の内3項目以上が当てはまるとフレイル、1~2項目ではフレイルの前段階(プレ・フレイル)と定義しています。

フレイルをチェックしてみよう

簡単に行えるフレイルのチェックをご紹介します。

◆身体的フレイルの簡易チェックシート
九州大学が作成したチェックシートです。(※2)疲労感・筋力・有酸素能力・活動量低下・体重減少の5つの項目から、6つの質問事項に答えるだけで、簡易的にフレイルかどうかを判定することができます。1~2項目が当てはまると「プレフレイル」、3項目以上が当てはまると「フレイル」となるようです。
(※2)九州大学 「身体的フレイルの簡易チェックシート」<https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/378>

◆イレブンチェック
東京大学のパンフレットでもフレイルのチェックが紹介されています。(※3)栄養・運動・社会参加の3項目から11つの質問事項に答え、当てはまるものがあると注意が必要となります。
(※3)東京大学高齢社会総合研究機構 「フレイルを予防して健康寿命をのばしましょう」<https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/medical_welfare/application/pdf/acd1d84742f2e1487b8218b5c06b78e6.pdf>

フレイル予防のためにできること

栄養

年を重ねると食事が簡素になってしまう方が多くなってきます。食も細くなってしまう方もいますが、必要な栄養をしっかりと摂れるように工夫しましょう。
筋肉のもととなるタンパク質を含む、魚・肉・卵・大豆製品は毎食とり、カルシウムを含む牛乳や乳製品は1日に1回は取り入れましょう。
食事に偏りがある人は要注意!タンパク質の上手なとり入れ方

運動

筋力の低下を防ぐことで、転倒、骨折で寝たきりになるリスクを軽減できます。ウォーキングなどの有酸素運動はもちろん、交流もかねて地域のスポーツクラブなどに参加するのも良いでしょう。
知って得する!正しいウォーキングによるメリット6つ

社会参加

自宅にこもりがちになり、社会参加が減ることもフレイルの入り口となりやすいことがわかってきているようです。地域のボランティア活動、趣味のサークルなど、交流の機会を保てるような活動を見つけてみましょう。

老後も好きなことを思いきり楽しむには、やはり元気が必要です!
今はまだ関係がない、と思う方も多いかもしれませんが、健康について考え、生活を整えることは若いうちから始めていても損はありません。元気で老後を楽しむために、できることを今のうちから考えてみませんか?

 

【参考・参照】
(※1) 日本老年医学会 日本老年医学会雑誌 51巻6号497-501 (2014:11)< https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf>
(※2)九州大学 研究成果 妥当性・信頼性の高い「身体的フレイルの簡易チェックシート」の作成<https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/378>(最終閲覧日:2020/03/14)
(※3)東京大学高齢社会総合研究機構 「フレイルを予防して健康寿命をのばしましょう」<https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/medical_welfare/application/pdf/acd1d84742f2e1487b8218b5c06b78e6.pdf>(最終閲覧日:2020/03/14)
一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会 フレイル診療ガイド<http://jssf.umin.jp/clinical_guide.html>(最終閲覧日:2020/03/14)
一般社団法人 日本老年医学会 フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント<https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/index.html#frailty>(最終閲覧日:2020/03/14)
日本老年医学会 日本老年医学会雑誌 51巻6号497-501 (2014:11)<https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf>
東京都医師会 住み慣れた街でいつまでも -フレイル予防で健康長寿-<https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/zaitakuryouyou/suminaretamachide.files/fureiruyobou.pdf>(最終閲覧日:2020/03/14)

【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

ページトップ