タンパク質はたくさん摂った方が効果あり?正しい摂り方を栄養士が解説
筋力をつけるなどの目的で、タンパク質を意識して摂っていませんか?高タンパク質の食品や、タンパク質補給のための補助食品などもよく見かけるようになりましたよね。実際、タンパク質は摂れば摂るだけ効果があるのでしょうか?今回は、あすけん栄養士がタンパク質の摂り方についてお伝えします。
タンパク質を摂れば摂るだけ筋肉がつく?
タンパク質は筋肉を作る材料となりますが、摂れば摂るだけ筋力がつく効果は期待できません。
普段の食生活ではタンパク質の摂取量が不足しているかも?と思うかもしれませんが、一般的な食生活をしていれば不足の心配はありません。日本人のタンパク質摂取量の平均値は、成人男女で1日あたり72.2gであり、必要とされる量を満たしている場合がほとんどです。(※1,2)
研究においても効果は否定的
タンパク質の摂取量と筋力トレーニングの効果との関連について、アメリカのイリノイ大学で行われた研究があります。(※3)
この研究では、今まで筋力トレーニングをしてこなかった50名の中年の成人を、中タンパク質摂取群(体重1㎏あたり約1.2g)と高タンパク質摂取群(体重1㎏あたり約1.6g)に振り分け、10週間の筋力トレーニングを実施したのちに除脂肪体重などの変化を評価しています。
結果、どちらの群も筋力の増加がみられ、高タンパク質を摂取したからといって筋力をさらに増加させたという結果はみられませんでした。
タンパク質の摂取とトレーニング効果への影響はさまざまな研究が行われており、この研究もその中のひとつではありますが、この結果から、一般的な食生活をしていれば、筋力トレーニングをしたからといってタンパク質摂取量を増やす必要はない、といえるでしょう。
むしろ摂りすぎにより健康へ影響する場合も考えられるため、摂りすぎには注意しましょう。
タンパク質は炭水化物とセットでの摂取が重要
タンパク質を摂る場合、タンパク質だけに偏って摂るのではなく、炭水化物とあわせてバランスよく摂ることが大切です。
「炭水化物は太るから控えめにして、タンパク質をたくさん摂った方がよいのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。せっかく摂ったタンパク質も、炭水化物(エネルギー)がないとムダになってしまうことがあるのです。
カラダに十分な炭水化物(エネルギー)を補給できていないと、摂取したタンパク質が筋肉合成に使われず、エネルギー源として使われてしまいます。また炭水化物を極端に控えるなどしてエネルギー不足が続くと、筋肉を分解してしまいます。
タンパク質とあわせてしっかり炭水化物を摂ることで、タンパク質が本来の筋肉合成のために使われます。極端に炭水化物を制限せず、バランスよく食べることが大切です。
プロテインはどう取り入れるのが正解?
タンパク質の補給に、プロテインサプリメント等の補助食品を取り入れている方もいるかと思います。しかし先ほど伝えた通り、通常の食生活をしていればタンパク質が不足する心配は少なく 、運動をしているからといって無理にプロテインを取り入れる必要性はありません。
とくにダイエット目的で運動をしている方は要注意で、プロテインを取り入れることでカロリーの摂りすぎに繋がる場合もあります。
補助食品は手軽なものではありますが、頼る前にまずは食生活で工夫できることがないか考えてみましょう。
タンパク質は卵や大豆製品、肉や魚だけでなく、ご飯やパン、野菜にも含まれるため、さまざまな食品をバランスよく食べるだけで摂取量を確保できます。
もし普段どのくらいタンパク質を摂っているか把握してみたい方は、あすけんアプリを活用して食事記録をしてみるのもよいですね。
→食事に偏りがある人は要注意!タンパク質の上手なとり入れ方
→朝にタンパク質が欠かせない理由って?忙しい朝でも食べられる方法も紹介
タンパク質はカラダに欠かせない栄養素ではありますが、やっぱり大切なのは「バランス」です。主食・主菜・副菜の揃った食事を心がけて、タンパク質だけでなくさまざまな栄養素を摂りましょう。
【参考・参照】
(※1)厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査
(※2)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
(※3)Colleen F. McKenna,Amadeo F. Salvador,Riley L. Hughes,et al.,“Higher protein intake during resistance training does not potentiate strength, but modulates gut microbiota, in middle-aged adults: a randomized control trial”,Am J Physiol Endocrinol Metab 320,E900–E913,2021
【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。
管理栄養士
広田 千尋