思考のクセを見直して、ストレスから身を守ろう

「ストレス社会」とも言われるほど、何かとストレスの多い現代。仕事の忙しさ、人間関係、健康や家族に関する悩みなど、ストレスの原因はさまざまです。そんな中、少しでもストレスの影響を減らせるといいですよね。

ストレスを受けやすい“思考のクセ”があることをご存じでしょうか。思考のクセを見直すと、ストレスから身を守りやすくなると言われています。今回は思考のクセと、見直し方のコツについて解説します。

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思考のクセについて知ろう

思考のクセとは?

同じ出来事が起きたときに、いつまでも落ち込み続けて何も手につかなくなってしまう人もいれば、すぐに気持ちを切り替えて行動できる人もいるかと思います。

このように、ヒトは自分の経験や環境で身に付けていった、決まった考え方のパターン=“思考のクセ”があり、その思考のクセにより感情や行動が影響されていると考えられています。

この思考のクセが、極端なとらえ方であったり、飛躍的な解釈であったりすると、ストレスが大きくなってしまうと言われています。

思考のクセの例

・取引は成立したのに、「期待の値段ではなかった」と自分を責める
→白黒つけないと気がすまない、非効率なまで完璧を求める

・ひとつうまくいかないと、「自分は何ひとつ仕事が出来ない」と考える
→わずかな出来事から広範囲のことを結論づけてしまう

・取引先から一日連絡がないので、「嫌われた」と思いこむ
→証拠もないのにネガティブな結論を引き出す

このように考えてしまう場面はありませんか?

このような自分の思考のクセに気づき、現実的で柔軟な考え方に変化させていくことで、ストレスを軽くできると考えられています。

思考のクセの見直し方

先ほどの例も以下のように考えてみると、気持ちがラクに過ごせるかもしれません。

・取引は成立したのに、「期待の値段ではなかった」と自分を責める
→「期待の値段ではなかったが、取引が無事に成立したことが一番の成果。」
と、完璧でなくても自分を肯定する。

・ひとつうまくいかないと、「自分は何ひとつ仕事が出来ない」と考える
→「今回はうまくいかなかったが、仕方がない。原因と対策を考えよう。」
と、気持ちを切り替える。

・取引先から一日連絡がないので、「嫌われた」と思いこむ
→「今日は忙しかったのかもしれない。忘れているだけかもしれないので、タイミングを見て連絡してみよう」
と、別の角度から視点を持ってみる。

ポジティブで悩みのない人間になろう!というわけではありません。思考のクセを変えることは自分を大切にし、ストレスから身を守る手段のひとつとなります。

思考のクセを変えるメリット

カラダの不調を軽くする

ストレスがたまりすぎると、疲れを感じやすかったり、眠りにくくなったり、食欲や便通にも影響があったりしますよね。 思考のクセを見直してストレスを減らすことができれば、このようなカラダの不調の軽減にも役立ちます。

楽観的な人の方が健康に生きられる?

メンタル面と健康の関連に注目したアメリカの研究があります。(※1)この研究では、楽観的な人は悲観的な人に比べ、血圧や血糖値、コレステロール値、BMI(体格指数)などが良好で、喫煙率が低い傾向である可能性が高いことがわかりました。

これらの数値が正常ということは、心臓病など循環器系疾患リスクが低くなるということが言えます。

カラダだけでなくメンタル面の調子も整えることで、将来の病気予防にも役立つと言えるでしょう。

ダイエットにも役に立つ

ダイエットに関しても、思い込みやネガティブな結論づけばかりしてしまうと、ダイエットを難しいものにしてしまいます。

例えば、「お菓子を食べてしまったのでダイエットはもう無理だ」と結論づけてしまうより、「お菓子を食べてしまったのは良くなかったけど、ビターチョコに変えられた」と良いところも見つけてみると、ダイエットが長続きしやすくなります。

また、「ダイエットは制限ばかりでつらく苦しいものだ」と思い込んでしまいがちな方は、「体型をキープしている人は、みんなつらくて苦しい思いをしているのか?」となどと、視点を変えてみるようにすると、新たな発見があるかもしれません。

実際に、思考のクセに着目した心理的な栄養指導の手法もあり、このようなダイエットは心理学的にも有効と言われています。

思考のクセは無意識の中で起きていることなので、初めは意識したり変えたりするのは難しいかもしれません。まずは自分としっかり向き合い、思考のクセを知ることから始めてみましょう。

 
【参考・参照】
(※1)Rosalba Hernandez, PhD, Kiarri N. Kershaw, PhD,Juned Siddique, DrPH, Julia K. Boehm, PhD,Laura D. Kubzansky, PhD, MPH,Ana Diez-Roux, MD, PhD, MPH,Hongyan Ning, MD,and Donald M. Lloyd-Jones, MD, ScM,“Optimism and Cardiovascular Health: Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA)”,Health Behav Policy Rev,2015 Jan; 2(1),62–73
厚生労働省 心の健康<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html>(最終閲覧日:2021/02/19)

【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。

広田 千尋

管理栄養士
広田 千尋

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