見た目のためだけじゃない!体重コントロールが必要な理由

カラダに脂肪が過剰に蓄積された状態を指す「肥満」。肥満がさまざまな病気を招くことは、みなさんご存じでしょう。しかし肥満は、見た目や体重だけで判断されるものではありません。病気のリスクを下げるためには、ガリガリでも太りすぎでもないカラダを保つことが重要です。肥満の定義と肥満がもたらす病気について解説します。
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簡単に分かる!肥満の判定

肥満の判定基準に用いられているのはBMIで、体重kg÷(身長m×身長m)の計算式で求めることができます。日本肥満学会が定めた判定基準では、BMI22を「標準体重」とし、BMI25以上を「肥満」と定義しています。
特に日本人は、BMI25となると肥満が原因となる病気にかかりやすくなります。将来健康を害すか、病気になると予測された場合に「肥満症」と呼ばれ、減量と治療が必要になります。

肥満のタイプは「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられますが、生活習慣病を発症するリスクが高くなるのは「内臓脂肪型肥満」です。

肥満が引き起こす9つの疾患

糖尿病

糖尿病は、インスリンの不具合により血糖値が慢性的に高くなる病気です。
食べる量が多く高血糖の状態が続くと、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が傷つき、インスリンが分泌されにくくなります。

また、内臓脂肪が増え過ぎて肥大した脂肪細胞からは、悪玉の生理活性物質が分泌されるようになります。これらの物質には、インスリンの働きを悪くする作用があります。そのため、内臓脂肪型肥満の方は血糖値が上がりやすく、糖尿病を発症しやすい傾向があります

脂質異常症

脂質異常症とは、血液中にコレステロールや中性脂肪が増え過ぎてしまう状態のことです。
コレステロールは、私達のカラダに欠かせない重要な役割を担っています。 その役割とは、体内に約60兆個ある細胞の壁を構成する成分になること、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの材料になること、肝臓で合成される胆汁酸という消化液の材料になることの3つです。

また、中性脂肪はカラダに必要な予備のエネルギーとして貯蔵されている脂肪で、コレステロール同様に重要な役割を担っています。
通常であれば、これらの脂質は全体量を調整する機能によって一定量に保たれています。しかし、過食や運動不足などによる肥満が一因となり、その調整機能に支障をきたすことがあります。

高血圧

血液は、心臓のポンプのような働きにより、全身をめぐっています。心臓が収縮して血液を送り出すときの血圧を「収縮期血圧」(最高血圧)、心臓が拡張して戻るときの血圧は「拡張期血圧」(最低血圧)といいます。これらが基準値より高くなった状態が、高血圧です。
肥満になると、肥大した脂肪細胞から分泌される悪玉の生理活性物質により血圧が上昇するなど、高血圧のリスクが高まります
ダイエットの大敵!?脂肪を蓄える「白色脂肪細胞」

動脈硬化

動脈硬化とは、動脈の血管壁にコレステロールや中性脂肪などが付着し、血管が詰まりやすくなる状態を指します。動脈硬化は自覚症状がほとんどないため、脳梗塞・心筋梗塞・脳卒中などを発症してから気付くというケースも少なくありません。
「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」のうち、どれか1つでも発症すると、動脈硬化を進行させます

心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓に血液を送る血管(冠動脈)がつまることで起こります。
冠動脈をつまらせる直接的な原因として、もっとも多いのが「血栓」です。動脈硬化により血流が滞ると、血栓ができやすい状態になります
また、高血圧も心臓や血管に大きな負担をかけるため、心筋梗塞になるリスクを高めます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる病気のことです。肥満により首や喉まわりにも脂肪がついていると、睡眠中に上気道が閉じてしまい、呼吸ができなくなってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群の症状として、睡眠時の大きないびきが挙げられますが、問題なのは、睡眠中に呼吸が止まり、眠りが浅くなってしまうことです。睡眠不足から、日中に強い眠気に襲われたり、集中力が散漫になります

また、狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞などを引き起こす危険性もあると言われ、最悪の場合は突然死を引き起こす可能性のある怖い病気です。

脂肪肝

脂肪肝とは、肝臓の細胞内に脂肪が異常に溜まった状態のことです。細胞間の細い血管が脂肪によって圧迫され、血流が悪くなって肝機能が衰えていきます。お酒の飲み過ぎ・食べ過ぎ・肥満・糖尿病などが原因で発症します
肥満や糖尿病によってインスリンの働きが悪くなったり分泌量が減少したりすると、脂肪が肝臓に蓄積されるようになります。

がん

がんは、正常な細胞のDNAに傷がつき、細胞分裂の際に突然変異が起こることから始まります。正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて細胞分裂を行い、必要以上に増えません。しかしがん細胞は、無秩序に細胞分裂を行うことで増え続け、周囲の正常な細胞や組織を破壊し、やがていろいろな部位に転移します。

これまでの研究から、痩せすぎても太り過ぎても、がんを含む全ての原因の死亡リスクが高くなることがわかっています男性はBMI21〜27、女性はBMI21〜25の適性体重を維持することが、がん発症のリスク軽減につながるようです。(※2)
自分の適正体重は?肥満度を表す体格指数BMI

変形性膝関節症

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)とは、ひざの表面を覆う軟骨が摩耗することで関節痛を引き起こす病気です。加齢とともに関節軟骨の質が低下し、柔軟性が衰えたり、摩擦をなくす作用を失うことが主な原因です。
肥満になり体重が増加すると、膝への負荷が増え、膝痛として発症するリスクが高くなります。

 

このように体重コントロールは、見た目の維持だけではなく健康維持にも大きく関わっています。普段から自分のカラダに適した食事量と栄養バランスを考えてカシコク食事選択をしていきましょう。

 

【参考】
(※1)eヘルスネット 肥満と健康
〈https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html〉(最終閲覧日2017/01/16)
(※2)科学的根拠によるがん予防
〈http://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/knowledge/301.pdf〉(最終閲覧日2017/01/16)

【執筆者】
コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。

衞藤敬子

管理栄養士
衞藤敬子

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