栄養士が伝授!血糖コントロールにおすすめの食事テクニック

近年、血糖値が気になる人のための特定保健用食品が多く出回り、血糖コントロールへの関心が高まっています。

過去の調査では、健康診断で高血糖と診断された人の10年後の医療費は、異常がなかった人に比べて約1.7倍かかるという結果が得られたことがあり(※1)、健康維持には適切な血糖コントロールが必要だと分かってきました。

高血糖がもたらすカラダへの影響と高血糖の予防に役立つ食事法について解説します。
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血糖値が急上昇することで起きるカラダの異変

血糖値が多少高いくらいでは目立った症状が出てくることはほとんどないとされています。
しかし、大幅に高くなると下記のようなことが起こると言われています。

  • 喉が渇きやすくなる
  • 尿の回数が増える
  • 疲れやすくなったと感じる
  • 空腹感を感じやすくなる
  • 体重が減る

これらは健康な人でも起こりがちな症状で、自覚症状によって高血糖に気づく人はあまりいないと言われています。そのため、検診などで糖尿病予備軍・糖尿病が発見されることが多くなるとされています。

高血糖が続くと引き起こされること

1.血液がドロドロになり、血管にダメージを与える

食事の後、血糖値が高い状態が続くと糖尿病を発症していたり、その予備群である可能性があります。さらに、高血糖によって血液がスムーズに流れにくくなるとされています。

2.神経障害が起こる

手足のしびれや痛みが起こる、感覚・味覚が鈍る、下痢便秘を繰り返す、異常な発汗など、さまざまな症状が全身に起こると言われます。高血糖の影響で血流が妨げられて神経細胞に酵素や栄養が十分に行きわたらなくなることなどが主な原因とされています。

3.網膜症になる

目の組織の網膜には、細い血管が張り巡らされていますが、高血糖によってこれらの血管がもろくなり、出血や血管の異常が現れるようになると言われています。
自覚症状がほとんどないまま進行し、失明してしまう危険もあり得るので注意が必要です。

4.腎臓の病気になる

腎臓は、糸球体という血液の老廃物をろ過する細小血管の塊が集まった組織です。高血糖が続くと、この細小血管が硬化して狭くなり、ついにはろ過機能も低下するとされます。症状が進むと人工透析が必要になるため、早期発見することが大切です。

その他、心臓病・脳卒中のリスクも高まるので、早めの高血糖対策がポイントになります。

血糖コントロールにおすすめの食事テクニック

食物繊維の多い食材を選ぶ

食物繊維は、小腸からの糖の吸収を緩やかにすることで、血糖値の上昇を抑える働きがあります。 野菜類・海藻類・きのこ類などに多く含まれているので、これらを十分に摂るよう心がけましょう。
1日の食事で、野菜類の小鉢(70g)を5皿食べると、目標摂取量の350g以上に近づけることができます。1回の食事で、1~2皿の小鉢を食べると取り組みやすくなりますよ。
不足気味の野菜を上手にとり入れるコツ

べジファーストを実践する

食後の大幅な血糖上昇が、脳卒中や心筋梗塞の原因となる血管障害を促進することが報告されています。そのため、食事で血糖変動を緩やかにすることがカギになります。

大阪府立大学が中心に行った実験(※2)では、糖尿病の患者さん・健康な人ともに野菜から食べ始める「べジファースト」で食後血糖値の急激な上昇が抑えられることが分かりました。
このときの取り組み方法は、5分かけて野菜を食べた後、肉食事開始から10分ほどたった時点でご飯・パンなどの炭水化物を摂るようにするというもの。

野菜から食べ始めるということだけでなく、すぐに炭水化物を食べ始めず、時間をかけて食事をすることが血糖値のコントロールに役立つといえます。早食いの習慣がある人は、意識して改善してみてください。

腹八分目を心がける

食事をとると、血糖値が上昇します。とくに炭水化物の量が多いと、食後血糖値がより高くなりやすく、その状態が長く続いてしまいます。お腹がいっぱいになるまで食べないと満足できないという人は、野菜料理を上手にとり入れ、腹八分目に抑えるよう心がけてみましょう。

1日3回食事をとる

同じ量を食べるとしても、朝食抜きで昼食・夕食の2回で食べるより、3食に分けて食べたほうが、食後の血糖値の上昇を抑えることができます。
したがって、多忙だからといって朝食を抜くのはNGです。 ですが、3回食事をとるためとはいえ、就寝直前に夕食を食べるのはおすすめできません。生活習慣病の大敵である肥満に陥りやすくなってしまいます。
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お酒を飲む機会を減らす

お酒を飲むと、つい食欲が増し、食事としての量やカロリーも過剰になりがちです。お酒を飲む機会が多い人は、その頻度を減らすことが大切です。

慢性的な高血糖とならないためには、BMIを適切に保ち、運動習慣をつけるのも有効です。

 

精神的なストレスも血糖値を上昇させる要因のひとつです。スポーツやレジャーで上手にストレス解消を図ってくださいね。

 

【参考・参照】
(※1)政府管掌健康保険の医療費動向等に関する調査研究,医療経済研究機構, 1996
(※2)今井佐恵子ら,“糖尿病患者における食品の摂取順序による食後血糖上昇抑制効果“,糖尿病 53(2),2010,112~115
日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2018-2019 文光堂

執筆者】
コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。

衞藤敬子

管理栄養士
衞藤敬子

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