経口補水液の正しい使い方!スポーツドリンクとの違いって?
夏に気を付けたい熱中症。最近では熱中症の対策として、「経口補水液」をすすめているのを見かける機会が増えました。テレビコマーシャルや、ドラッグストアなどで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
スポーツドリンクとどう違うの?スポーツドリンクではだめなの?と疑問に思う方も多いはず。また経口補水液はどんなときに使ったらいいのでしょうか。
今回はあすけん栄養士が経口補水液の正しい使い方と、スポーツドリンクとの違いについて解説します。
経口補水液とは?
水と一緒に電解質も補給できる飲み物
経口補水液とは、水に食塩とブドウ糖を溶かしたものです。(※1)
市販の多くの経口補水液は、ナトリウム(食塩)、ブドウ糖のほかに、カリウム、マグネシウム、リンなどが含まれ、水と一緒に電解質を補給することができます。
普通の水よりもカラダに浸透されやすくなるようにブドウ糖の濃度が調整されており、多量に汗をかいたときや、熱中症の応急処置の水分補給などとして活用されています。(※2)
経口補水液には「病者用食品」と「清涼飲料水」がある
経口補水液の中でも、消費者庁から「病者用食品」として表示許可を受けているものがあり、パッケージにマークが表示されています。病者用食品の場合、「脱水状態に適している」等の効果を表示することができます。
それ以外の経口補水液はすべて「清涼飲料水」となり、パッケージの種類名称にも清涼飲料水と書かれています。清涼飲料水には、病者用食品のような効果を記載することができません。
ではどちらを選んだらいいのか?と迷ってしまいますよね。迷ったときは病者用食品を選ぶと安心ですが、清涼飲料水の中にも適切な配合がされたものもありますので、好みに合わせて選んでみるのもいいでしょう。
スポーツドリンクは経口補水液とどう違う?
経口補水液とスポーツドリンクの違い
スポーツドリンクは経口補水液に比べ、ナトリウムやカリウムの量が少なく、糖質が多くなっています。
ナトリウム(mEq/L) | カリウム(mEq/L) | クロム(mEq/L) | 炭水化物(g/L) | 浸透圧(mOsm/L) | |
経口補水液 | 50 | 20 | 50 | 25 | 270 |
スポーツドリンク | 21 | 5 | 16.5 | 67 | 326 |
※厚生労働省の熱中症診療ガイドライン2015(※2)をもとに作成
経口補水液はカラダへの吸収スピードを考えて作られていますが、スポーツドリンクは糖質が多いため吸収スピードが遅くなります。さらにスポーツドリンクは、ナトリウムやカリウムの量が少なく、汗などで大量に失われた際の補給には不足してしまいます。
スポーツドリンクはどう飲む?
スポーツドリンクは、大量の汗をかいたときや熱中症の応急処置ではなく、スポーツ時や汗をかく場面の水分補給に勧められています。
ただし汗をたくさんかく場面では、スポーツドリンクだけではナトリウムが不足することがあります。食塩が含まれる食品や、塩分タブレットなどから適宜食塩も補給することが大切です。
スポーツドリンクの注意点
スポーツドリンクには500mlあたり20~40gもの糖質が含まれ、毎日のように飲むことで血糖値に影響したり、体重が増えてしまったりする可能性があります。
糖質の摂り過ぎが気になる方は、糖質の少ないカロリーゼロのものを選ぶように気を付けましょう。
ただし、普段の水分補給は、食事がしっかりととれていれば水やお茶で十分です。ナトリウムなどの電解質は食事から十分に補給できます。夏だからといってスポーツドリンクばかり飲むのは控えましょう。
経口補水液の正しい使い方
どんなときに使ったらいい?
経口補水液は大量に汗をかいたときや、熱中症の応急処置としてすすめられています。(※4)
めまい・筋肉痛・大量の発汗・吐き気・倦怠感などの熱中症が疑われる症状がある場合は、経口補水液で速やかに水分やナトリウムを補給しましょう。(※4)
屋外で長時間過ごしたり作業したりするときや、夏場のスポーツ、イベント時には経口補水液を持ち歩いておくと安心です。
経口補水液の注意点
経口補水液は日常的に飲む物ではありません。スポーツドリンクと同じような感覚で飲むのはNGです。
経口補水液500mlあたりのナトリウム量は、食塩相当量で約1.5gにもなります。これはみそ汁1杯分とほぼ同じ量の食塩です。熱中症が心配だからと、毎日のように飲むと食塩の過剰摂取に繋がるため注意が必要です。
また、疾病などによりナトリウムやカリウムの制限のある方は、使用する前に医師へ相談しましょう。
経口補水液は応急処置用で、スポーツドリンクは通常の水分補給用、という使い分けについて覚えていただけましたか?食事・水分・食塩摂取に気を付けて熱中症対策を行い、暑い夏を乗り切りましょう。
【参考・参照】
(※1)厚生労働省 熱中症予防のために<https://kanairodo.mhlw.go.jp/pdf/heatstroke.pdf>(最終閲覧日:2020/07/13)
(※2)厚生労働省 熱中症診療ガイドライン2015<https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf>(最終閲覧日:2020/07/13)
(※3)大塚製薬 オーエスワン オーエスワンシリーズが消費者庁から許可を受けた表示について<https://www.os-1.jp/products/evidence/>(最終閲覧日:2020/07/13)
(※4)環境省 熱中症予防サイト<https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php>(最終閲覧日:2020/07/13)
【執筆者】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。
管理栄養士
広田 千尋