糖尿病患者のリアルな食生活を発信する「25歳の糖尿病YouTuber」が目指す偏見のない世界【後編】


連載 #あすけんのある生活 vol.7

あすけんを始めたきっかけや使い方のコツ、人生に起きた変化など、さまざまな方の「#あすけんのある生活」をお届けします! 第7回目は、25歳で突然「1型糖尿病」と診断され生活が一変した本間太希さんが病気と向き合いながら食べる喜びを取り戻していく様子を、前後編に分けてお届けします。

図5

<プロフィール>
本間 太希(ほんま たいき)さん
1996年新潟生まれ。大学在学中に飲食事業を立ち上げwebサイトのデザインを担当するが、2022年春に突然の過呼吸で倒れ病院に緊急搬送。原因不明の「1型糖尿病」と診断される。退院後も頻発する低血糖で仕事がままならず、前職の経験を活かし、フリーのWebデザイナーに転向。現在は患者のリアルな日常をYouTubeで発信している。2023年6月1日より自転車で日本一周に挑戦。
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※前編『25歳で突然「1型糖尿病」に!食事が苦痛に変わった地獄のような日々から食べる喜びを取り戻すまで』はこちら

自分の経験を誰かのために

ーーSNSで同じ病気の方の様子がわかったことで、病気と前向きに付き合うことができるようになっていったのですね。

そうですね。それまでは周りに1型糖尿病の人がいなかったので不安も大きく、この先どうしようという感じでしたが、SNSで同じ病気の人が普通に暮らしている様子を目にして気持ちが落ち着いた部分はあります。

ただ、僕の中では病気の原因が不明というのはずっと引っかかっていて。

せめて自分に原因があれば諦めがつくというか、気持ちを切り替えて頑張ろうと思えたのかもしれませんが、原因がわからないというのが病気をなかなか受け入れきれなかった1つの出来事ではあると思っています。

今でも完全に受け入れているかというと、正直微妙なところですが…。

ーーそれでもご自身の病気について、SNSで発信していこうと思ったのはなぜですか?

一番は自分がSNSで同じ病気の方と繋がって人生が変わったので、僕の経験も誰かの役に立つんじゃないかなと思ったことです。

先ほども述べた通り、今は検索してもなかなか患者のリアルな様子に辿り着かず、1型糖尿病とはこういうものです、といった病気そのものの説明が多いんですね。けれど僕が知りたかったのは、病気だけれど実際はこんなふうに生活しています、だったり、こんなふうにうまく付き合っていっていますというような患者本人の体験でした。

きっとこれから発症する人は自分と同じ道を辿るのではないかと思い、だったら自分の経験を記録として残したいと、SNSでの発信を始めました。症状は人によっても違うので、1人でも多くの体験談があるといいんじゃないかなと思います。

目指すは人前でも堂々と注射の打てる世界

ーーSNSで発信してみて反応はいかがですか?

同じ病気の方から「元気がでました」などコメントをもらうと嬉しいですし、とても励みになります! そのおかげで続けられていると言っても過言ではありません。

けれど同時に、糖尿病ではない多くの方の目に触れるようになると心無い意見が届くことも増え、「糖尿病になるなんて自業自得でしょ」といった意見や「本人の生活の問題」「贅沢病」など、“糖尿病=生活習慣病”という認識の人がとても多いことに気付かされました。2型でも半分くらいは遺伝によって発症することもありますし、コントロールが難しい生活背景を抱えている方もいます。

この病気は日常での負担が大きく、生きていくだけでも大変なのに、糖尿病への偏見から病気になったことを恥じて友達や周りに言えなかったり、隠れて注射を打っていたり、低血糖の症状が出ても気づかれないように振る舞ったりしている患者が多いこともわかりました。

Instagramでは自炊内容を紹介することも

Instagramでは自炊内容を紹介することも

SNSで批判されたことに納得できない気持ちはありましたが、言い返したところで病気が治るわけでもなければ、注射の本数が減るわけでもない。だったら糖尿病を正しく知ってもらい、世の中に広めてイメージを変えていこうと思ったんです。

目指しているのは、糖尿病患者が人前でも気にせずに注射を打てるようになる世界です。

自転車で日本一周へ出発!

ーー具体的にはどのようにしてイメージを変えていくのですか?

糖尿病について話しているだけでは患者以外に情報を届けられる機会が少ないので、より多くの人に興味を持ってもらえるよう、今月から自転車で日本一周をスタートします。

1日4回以上のインスリン注射で血糖値を管理しながら、全国の糖尿病患者の方に会いに行こうと思っています。皆さんの体験談や悩みを聞いたり、一緒に食事したりする様子をYouTubeで配信しながら、糖尿病の正しい情報についても発信していくつもりです。きっと色々なドタバタが起きると思いますが、健康な人でも大変な日本一周という道のりを、糖尿病である自分が挑戦する姿を多くの方に見ていただきたいです。

運動をすると血糖値が下がるため、僕自身も病気がわかってからは低血糖を恐れて運動はしていませんでした。フォロワーさんからも同じように「低血糖が怖くて部活に参加できません」だったり、子どもが患者の親御さんからは「体育を休ませています」などのコメントをもらうことも多く、痛いほど気持ちがわかる半面、安易に大丈夫ですよとも言えず、どうするのが良いかずっと考えていました。

そうして思ったのは、食事と同じように、血糖値を気にして運動を我慢するのは違うんじゃないかと。病気に支配されて人生を諦めるのではなく、血糖値をコントロールしながらやりたいことを実現していく、そんな生き方を日本一周というチャレンジを通して伝えたいと思いました。自転車で日本一周が達成できたら、この先何でもできる気がしています。

自転車を漕ぎながらもインスリン注射は欠かせない

2023年6月1日スタート。自転車を漕ぎながらもインスリン注射は欠かせない

ーー新たなチャレンジですね! 大変な道のりかとは思いますが頑張ってください。

ありがとうございます。病気になったことで体が一変し、第二の人生が始まりました。病気になってからはそれまで気付かなかった感謝や思いやりを感じられることも増え、これからは糖尿病でつらい思いをしている同じ患者のためにできることを行うのが、自分がこの病気になった理由ではないかと思っています。

旅の途中では、全国各地のおいしい食べ物もあすけんの栄養素グラフを確認しながら思いっきり楽しんでくるつもりです(笑)。YouTubeでそんな情報も発信していく予定ですので、皆さん、よかったらぜひ応援してください!

 

日本一周を目指して現在もチャレンジ中!

日本一周を目指して現在もチャレンジ中!

 

※本記事は個人の経験に基づいた内容になります。食事や行動などについて医師から指示がある場合はそれに従ってください。治療中の方が実践する場合は必ず医師に相談しましょう。

取材・執筆/城石 愛


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